序
『クリシュナヘの道』を世界中に与えて下さった、クリシュナ意識国際協会の創設者、神の恩恵を受けている精神的な指導者である尊師A・C・バクティヴェーダンタ・スワミ・プラブパーダの蓮のような御足に、私たちは尊敬の礼をささげます。主チャィタンニャ・マハープラブの四九七回目の降誕祭に、シュリーラ・プラプパーダの満足のために、『クリシュナヘの道』を出版でき、感激しています。
シュリーラ・プラブパータの書物のうちで、この本は最も特異なものかもしれません。一九六一年に、日本で開かれる、人間精神を開発するための国際会議への招待状に対する返事として、初めこの本はヴリンダーヴアンで書かれました。この会議の出席者の大半は、東洋人でした。シュリーラ・プラブパーダは、時を超えた『シュリーマド・バーガヴァタム』の教えを、いかにして東洋人に最も理解しやすい方法で紹介できるのであろうか、と真剣に考えました。バーガヴァタムの原文は、五千年以上前に書かれ、一万八千節によって構成された、長いものです。当然出席者たちは、その全編を聞いている暇はないので、原文からの一章を抜粋することにしました。
その章というのは、主クリシュナが降誕なさった場所であるヴリンダーヴァンの、秋の情景です。東洋の人々は、大自然の景色について、とりわけ秋について聞くことを、めでたいことであると好むのを、シュリーラ・プラブパーダはよく知っていました。つまり大自然を例にとって、精神的な哲学を教えるというのが、彼らにとって最も理解しやすいのです。季節感あふれる風景の一場面ごとに、それに適した教えを添えることができます。バーガヴァタの知識(最高主の献愛者と聖典)という光り輝く星が一時的に隠れてしまった秋雨の夜の、星一つ見えないどんよりと曇った空は、現代の物質主義的な無神論的社会にたとえられています。シュリーラ・プラブパーダは、それぞれの章の中の各節に合わせて計四十八の解説を書きました。
シュリーラ・プラブパーダの計画は、その会議の主催者側に、それらの絵を描く優秀な東洋の画家を捜し出してもらうことでした。さらに自分でも画家の参考のために解説を書きました。それらの絵画と解説が、会議の出席者にとって、印象深いものになることを願いました。そしてもしできれば、その絵画と解説から成る本を出版することを希望しました。
残念にもシュリーラ・プラブパーダは、その会議に出席できず、『クリシュナヘの道』の計画全体は、延期せざるを得ませんでした、実際にはシュリーラ・プラブパータが精神界に戻られたときにすら、この本はまだ出版されず、絵もまだ描かれていませんでした。
ですからこの偉大な書物を完成させる責任は、シュリーラ・プラブパーダのすべての杵作の出版に全力を尽くしている、バクティヴェーダンタ文庫に残されたのでした。この本が特に東洋人のために書かれていたので、仕事はホンコン支部に任されました。長い間捜した結果、ようやく有名な画家の李芸生女史の助けを、幸運にも得られました。彼女の画家としての才能と、感受性の鋭い筆使いのみが、プラブパーダの著した美しい秋の様子を、完壁に表現できるのです。『クリシュナヘの道』は、今こそ、世界中に美しく輝き出すでしょう。
この本は東洋の読者の好みに応じて、二部に分けられています。詩的な想像カをもって見ることを望む人は、李芸生女史による美しい水彩画の第一部を好むでしょう。それらの水彩画は、わずか一年足らずのうちに完成され、女史は高齢のため時には視力を失いながらも、驚くほど細密に描いています。このコレクションは、長い間近代中国における優れた画家の一人として認められてきた、彼女の作品の集大成であることは、疑う余地もありません。彼女の細密画法の水彩画と、シュリーラ・プラブパーダによる詩的な解説は、インドと中国という世界最古の伝統的文化の、ユニークな調和を作りあげています。
『クリシュナヘの道』を哲学的にさらに探究することを望む読者は、この本の解説の部分を読めばいいでしょう。原色の絵の縮少されたものと、シュリーラ・プラブパーダの解説全体がそこにあります。
一九八三年三月主チャイタンニャの降誕祭の日に バクティヴェーダンタ文庫ホンコン鋼支社