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第85章

ァスデーヴァへの精神的教え.生き返った六人の息子 

ヴェーダによれば家族の年少者は年長者に毎朝尊敬の礼を捧げるべきであるとされ ています。特に、子供や弟子は毎朝両親やグルに尊敬の礼を払わなければなりません。 

主クリシュナと主寺ハララーマはこのヴェーダの原則にしたがって、父ヴァスデーヴァ や母親たちに欠かさず尊敬の礼をお払いになっていました・主クリシュナと主バララー マがクルクシェートラの供儀祭からお帰りになってからのある日のこと、二人がヴァ スデーヴァに尊敬の礼をお捧げになると、ヴァスデーヴァは息子たちの偉大さをじっ 力 くりと噛みしめるようにして味わいました。なぜなら、クリシュナとバララーマのこと を聖者たちから供儀祭場で教えられたからです。いいえ、ただ聖者たちから教えられた だけではありません。クリシュナとバララーマが普通の人間ではなく、かけ離れて非凡 なお方であることは、彼自身が何度も経験してきました・ですから、ヴァスデーヴァは 二人の息子が零ハガヴァーンであるという聖者たちの言葉に対してまったく疑いを持ちませんでした。

ヴァスデーヴァは強い信念を持って息子たちに言いました。 いと おんみ 「愛しいクリシュナよ、御身はサッチダーナンダ・ヴイグラハの質を持つバガヴァー ンでいらっしゃいます。そしてバララーマよ、御身はすべての神秘力の支配者・サンカルシャンでいらっしやいます。今や(一と御身お二人が永遠なるお方でいらっしゃるこ とがわかりました。御身お二人はこの物質宇宙とその原因を超越している至上者マハー. ヴィシュヌであり、一切を支配するお方でいらっしゃいます。この宇宙は御身によって 維持されています。いいえ、御身はこの宇宙を創造・維持するばかりか、宇宙の構成要素 リーラー でもいらっしやいます。御身お二人こそが宇宙の支配者で、宇宙はただ御身の遊戯のた めに創られたものでございます。 

御身はこの世界の原因であると同時に結果でもいらっしゃいます。宇宙創造の時か ら破壊の時まで、時間の定則のもとで様々な物質の様相が現われますが、その様々な様 相も御身であります。そして、支配者と非支配者という物質界の二つの相も御身で、そ の両者の上に立つ至上の超越支配者もまた御身でいらっしゃいます。ですから御身お 二人は、われわれの知覚を越えたスーパーソウルであり、誕生も変化もないお方でいらっ しゃいます。物質の体には六つの変化が起こりますが、御身はそれらの変化に左右され ません・この物質界の中にある素晴らしい多様性もまた御身によって創られたもので ございます。御身はスーパーソウルとして、全生命体や全原子の中にお入りになってい て、万物を維持するお方でいらっしゃいます。 

全生命体が持つ生命力や創造力は、御身から離れて独立的に存在するものではなく、それらの背後にいる至上者である御身お二人に依存するものでございます。生命力も 創造力も、御身お二人の意志がなければ力を発揮することはできません。物質エネルギー は知覚力がなく、ただ御身の指示に対して従属的に動くだけです。生命体ができること は、ただ望むことだけです。御身お二人の裁可と意志がなければ、生命体は何もするこ とができず、自分の望む結果を得ることもできないのです。 

根本的エネルギーはただ御身お二人から現われたものでございます。親愛なる主よ、 またた 月の輝き、炎の熱、太陽の光、星の瞬き、力強い雷電、山の重さ、地球の力、そして士の香 けが り・これらすべては御身の様々な現われでございます。水の汚れなき味わいや、全生命 体の生命力もまた御身の現われです。水自体もその味も、御身であるのです。 

親愛なる主よ、感覚の力、思惟の作用(思考、意志、感情)、体力、そして体の動きなどは、 体の中の様々な気の動きによってなされるものに見受けられますが、最終的にはすべ て御身のお力の現われにすぎません・膨大な宇宙空間の広さも御身によって支えられ ています。空間の中の音、稲妻、至上の音・オームカーラ、そして様々な事柄を明瞭に記 述する言語表現なども、すべて御身の象徴的代理であり、すべては御身です。感覚、感覚 デーヴ↓J の主宰神、神々、そして知識の主題も御身です。感覚というものは知識を得るためにあ るものですが、知識を得るという行為自体も御身です。御身は、物質界の原因である無知の自我意識であり倉感覚の原因である激情の自我意識でありそして物質界の様々な デーヴァ 神々の原因である徳の自我意識でいらっしゃいます。束縛された魂はマーヤー(幻想エ ネルギー)によって輪廻転生を繰り返しているのですが、御身はそのマーヤーでもいらっしやいます。

親愛なるバガヴァーンよ、土が樹木や植物などを生み出す基であるように、御身こそ が万物の根本原因でいらっしゃいます。すべての中に土の要素があるように、御身もす べての物質の中にスーパーソウルとして現われていらっしゃいます。御身こそが根本 原因、そして永遠の原理でいらっしゃいます。すべては御身の一つのエネルギーの現わ れにすぎません・サットヴァ、ラジャス、そしてタマスという物質自然の三様式とその 相互作用は、すべて御身の代理者であるョ-ガマーヤーによって御身自身と結ばれて います。それらの三様式は独立的に動くように見えるかも知れませんが、実は御身スー パーソウルに依存しているのです。御身は万物の根本原因でいらっしゃるので、誕生、 生存、成長、増殖、衰退、そして破壊という物質現象の相互作用は、御身の中にはまった く存在しません。様々な現象の中に、御身の至上のエネルギーであるヨーガマーヤーが 働いていますが、ョ-ガマーヤーは御身のエネルギーであるので、万物の中に存在して いるのは実は御身でいらっしゃいます」 。

このことは『バガヴァッド・ギーター」の第九章の主クリシュナの言葉によって一私は あまね 非人格的な様相によって全物質エネルギーの中に遍く行き渡っている。すべては私に よって維持されているが、私はそれらの中にはいない」と説かれています。ヴァスデー ヴァもまたここで同じことを述べています。「主がすべての場所にいらっしゃるのでは ない」ということは、「すべての場所で主のエネルギーが作用しているが、主自身はすべ ての物から離れていらっしゃる」ということを指し示しています。このことは大会社の すみずみ 例を考えれば理解できます。大会社では、力すなわち社長の意向が会社業務の隅々にま すみずみ で行き渡っています。しかし、社長自身が事務所や工場の隅々に直接いるのではなく、 社長のエネルギーが様々な場所で作用しているのです。それと同じように、主のエネル ギーがどのように作用しているかを知ることによって、バガヴァーンがすべての場所 アチンテャベーダーベーダー・タヅトヴァ にいらっしゃることを感じ取ることができます。したがって、不思議不一不異論(万物 と至上主は一つであると同時に異なるという哲学)はすべての場所で確かなものであ ると理解できます。主は唯一の存在でいらっしゃるのですが、主のエネルギーは無限で一○ 

ヴァスデーヴァは言いました。企トレ」 「この物質界を大きな川の流れに例えるなら、その波は物質自然の三様式すなわち徳.激情・無知でございます。物質の体も感覚も思考昔心志や感情の動きも苦しみ幸福、 執着や欲望の状態も、この三様式によって生み出されたものです。愚者たちは御身がこ れらの物質的な反動を超越したお方であることを知らないために、結局は果報的な活 しば 動に縛られ続け、解放されることなく生と死を繰り返すのです」 

このこともまた『バガヴァッド・ギーター』の第四章で主クリシュナの言葉によって 明らかにされています。つまり、至上主クリシュナの出現と活動を知るならば物質的な 束縛から解放され、精神界に帰ることができるのです。したがって、クリシュナの超越 的な御名、姿、活動や性質は、物質自然によって生み出されたものではありません。 

「親愛なる主よ、束縛された魂がこのような欠点を持っていたとしても、何らかの形 で献身奉仕に触れたなら、文明ある人間として誕生し、発達した意識を持ち、そして献 身奉仕の進歩をさらに続けて行くことができます。しかし、普通の人たちは外的エネル ギーによって幻惑されているために、まれにしか得られない貴重な人生を無駄にして います。永遠の自由を得る機会を失い、何千回もの誕生を繰り返して、やっとのこと獲 得した貴重な人生を無駄にしているのです。 

人々が子や孫に執着するのは、体が自分であると考えているためです。束縛された生 いつわ いつわ しぱ 活をしている者は誰もが偽りの関係や偽りの一愛情に縛られているので、全世界はそんな虚偽の紳に基づいて動いています。御身お二人は私の息子ではなく、本来の指導者、 本来の祖先であり、プラダーンやプルシャと呼ばれるバガヴァーンでいらっしやいま す。しかしながら、不必要に軍事力を増強しているクシャトリヤたちを滅ぼすためにこ の地上にお現われくださいました・以前にも、御身はそのことを私にお話しくださいま けいけんつつ した・親愛なる主よ、御身は束縛された魂を保護し、謙虚で慎ましい者たちに至上の恩 恵をお授けくださるお方です。御身の御足こそが物質界の束縛からの解放を授けるも のですので、御身の蓮華の御足に保護を求めます。 私は長い間、この体が自分であり、バガヴァーンである御身がわが子であると考えて ろうごく おりました・親愛なる主よ、カムサの牢獄にお現われになったまさに最初の時から、御 身がバガヴァーンであることは知らされておりました。御身が降誕された目的が宗教 原則を保護し、信念のない者たちを滅ぼすことであることは存じ上げておりました。御 身は誕生されませんが、使命を果たすために時代毎にお現われになります。親愛なる主 よ、空間の中に数多くの姿が現われては消えていくように、御身もまた数多くの永遠の リーラー 姿の中に現われては去って行かれます。御身の遊戯や出現・他界の神秘を知ることなど つし」 一体誰にできるでしょうか。したがって、私たちの務めはただ一つ、御身の栄光を称え ることでございます」

ヴァスデーヴァがこのように神聖なる二人の息子クリシュナとバララーマを称える いつ/、 と、二人の主は微笑まれました。クリシュナとバララーマは献身者にたいへん慈しみ深 いお方なので、ヴァスデーヴァの賛美の言葉を優しい微笑みに満ちてお受け入れにな りました。クリシュナがヴァスデーヴァにお応えになりました。 「お父さんが何とおつしやろうと、私もバララーマもお父さんの息子であることに変 わりはありません。私たちのことについて様々にお話しになりましたが、確かにそれは 精神的知識を深く哲学的に理解した言葉です。まったく同意します」 

ヴァスデーヴァは主クリシュナと主バララーマが自分の息子であると受け入れて、 きわ 人生の完成をすでに究めていたのですが、クルクシェートラの巡礼地に集まった聖者 たちから主が一切万物の根本原因だと教えられたので、ただクリシュナとバララーマ ヘの愛のために、聖者たちの言葉を繰り返したのです。主クリシュナはヴァスデーヴァ との親子関係を保ち続けたいとお考えになっていたので、まず、自分がヴァスデーヴァ の永遠の息子であり、そしてヴァスデーヴァが自分の永遠の父であるとおっしゃった 後、次に全生命体の精神的な本来の姿について説明されました。 

「愛しいお父さん、私や兄のバララーマばかりか、ドワーラカーの街に住む人々も、こ の全宇宙に住む人も、誰もすべてがお父さんが説明した通りです。私たちすべては質的に一つなのです」ここで主クリシュナはヴァスデーヴァがマハーバーガヴァタ(第一級の献身者)の視 点を持てるように導いていらっしゃいます。マハーバーガヴァタの視点とは全生命体 が至上主の一部分であり、至上主がすべての者の心臓の中に座っていると見ることで す。

すべての生・命体には本来の精神的な姿があるのですが、物質界との接触によって物 質自然の様式に影響され、物質の体が自分であると考えたために、精神魂の本来の質を 忘れてしまったのです。その結果、真の自己がバガヴァーンと同じ質を持つことを見失っ たのです。そもそも、個々の生命体がそれぞれまったく別のものであると誤って考える 理由は、物質の体が異なっているからです。物質の体に違いがあるために、私たちの目 には精神魂がそれぞれ違ったものであるかのように見えるのです。 主クリシュナは、物質の五要素についての良い例をあげていらっしゃいます。

総物質 エネルギー(土、水、火、空気と空間)は陶器、山、樹木やイヤリングなどの物質界の中の あらゆる物の中に、様々な割合や分量で存在しています。山は五要素の膨大な量の組み 合わせであり、そして小さい陶器は少量でありながらも同じ要素で構成されています。 このように、形や量が異なったとしても、すべての物質はどれも同じ構成要素で成り立っ ています。クリシュナを筆頭とする何百万ものヴィシュヌを含むヴィシュヌ・タットヴァも生命体であり、そして主ブラフマーから小さな蟻に至るまで、様々な姿を持つ者もす べて生命体です。これら全生命体はまったく同じ精神的質を持っています。ただ量の多 少があるだけで、質的にはまったく同じです。ウパニシャッドに述べられているように、 至上主クリシュナは全生命体の主として、彼らに生きるための必需品を授け、彼らを維 持していらっしゃいます。完壁な知識の持ち主とはその哲学を知っている人のことで なんじ す。「タット・トヴァム・アシ」(「汝らは同じ」の意)というヴェーダ文典の結論は、誰もが 至上主自身であることを意味するものではなく、誰もが至上主と同じ質を持つことを意味しているのです。

精神生活に関する全哲学をクリシュナが短くまとめて説明されるとそれを聞いて いたヴァスデーヴァは息子クリシュナに大いに喜んで意気高揚し、言葉を失って何も そば 言えなくなりました。そんなヴァスデーヴァの側には主クリシュナの母デーヴァキー が座っていました。かつて、慈悲に満ちたお方であるクリシュナとバララーマが、グル の死んだ息子をヤマラージのもとから連れ戻されたことがありました。デーヴァキー はそのことを聞いてからというもの、カムサに殺された息子たちのことが片時も忘れ られません。息子たちを想うと悲しみに胸がえぐられました。 

デーヴァキーは殺された息子たちが忘れられず、主クリシュナとバララーマにお願いしました。一親愛なるバララーマよ・バララーマという名前が示すように、あなたは誰にでも喜 こころ びと力をお授けになるお方です。そんなあなたの限りない力は、私の身も思惟もはるか に越えています。親愛なるクリシュナよ・あなたはすべての神秘ョ-ギーの支配者、そ してブラフマーをはじめとする数多くのブラジャーパテイーの主人、そして本来の( こころ ガヴァーン・ナーラーヤンでいらっしゃいます。悪魔たちは思惟と感覚が抑え切れず、 たく ぜいたく 徳の様式から堕落し、教典の教えに巧みに背き、そして賛沢で思い上がった暮らしをし ています。あなたが降誕された目的は、そのような悪魔を滅ぼし、時の流れの中で間違っ た方向に進んでしまった者たちを懲らしめることです。あなたはこの世界に降りて来 て、悪にまみれた統治者たちを滅ぼし、世界の苦しみを取り除いてくださるのです。マ ハー・ヴィシュヌは宇宙の原海に横になっていらっしやいます。全宇宙はそのマハー・ いと ヴィシュヌから現われ出たものです。しかし愛しいクリシュナよ、私にはわかっており ます。そのマハー・ヴィシュヌはあなたの完全拡張体なのです。この宇宙の創造・維持・ 破壊は、ただあなたの拡張体によって行なわれるのです。私はためらうことなくあなた ゆだ に身を委ねます。あなたがグルのサーンディパニ・ムニに教えを授かったお礼を申し出 た時、ムニは死んだ息子を連れ戻すようにあなたに言いました。するとあなたたち二人はすぐにヤマラージのもとから子供たちを連れ戻されました。このことからあなたが 全神秘ョ-ギーの最高支配者でいらっしゃることがよくわかります。どうか私にも同 じ願いをかなえて頂けませんでしょうか。カムサに殺された息子たちをここに連れ戻 して頂きたいのです。そうして頂けるなら、あの子たちに一目会うことができるなら、 どれほど嬉しいことでしょうか」

主バララーマと主クリシュナは母の言葉をお聞きになると、すぐにヨーガマーヤー を呼び、スタラと呼ばれる低位の惑星系に向かって出発されました。かつてバガヴァー ンがヴァーマナとして化身された時、悪魔の王者バリ・マハーラージが自分の全財産を 主に捧げたため、主はバリ・マハーラージに大いに満足され、王国や居住地として全スタ ラをお授けになりました。この偉大な献身者バリ・マハーラージは主バララーマと主ク リシュナが自分の星においでになったのを知ると、喜びに浸りました・主クリシュナと バララーマがバリ・マハーラージの前にお立ちになると、バリ王とその家族は座から立 ち上がり、主の蓮華の御足に尊敬の礼を捧げました。バリ王が主クリシュナと主バララー マに最高の座を捧げると、主は心地好くお座りになりました。バリ・マハーラージはお ま 二人の蓮華の御足を洗い、その水を自分や家族の者たちの頭の上に撒きました。クリシュ デーヴァ ナとバララーマの蓮華の御足を洗った水は主ブラフマーのような偉大な神々さえも浄化するのです壷

その後、バリ・マハーラージは豪華な衣装、装飾品、白檀、キンマの実、ともしび、そし ておいしいご馳走の数々を持って来て、家族の者たちとともに規定原則にしたがって みずか 主を崇拝し、様々な財宝とともに自らの体を主の蓮華の御足に捧げました。バリ王は超 越的な喜びを感じながら主の蓮華の御足を何度も自分の頭に押し頂いてはまた 胸に抱きしめ、超越的な至福を味わいました・愛の涙が左右の目から流れ出し、髪が逆 立っています。声を詰まらせながら主に祈りを捧げました。 

「親愛なる主バララーマよ、御身は本来のアナンタデーヴァでいらっしやいます。御 身はたいへん偉大なお方であり、アナンタデーヴァ・シェーシャをはじめとする無数の 超越的な姿は、御身と主クリシュナから現われたものです。御身は万物の根源なるお方、 バガヴァーンであり、御身の永遠の姿は完全な知識と至福に満ちています。御身は全世 界の創造者であり、ジュニャーナ・ョ-ガとバクティ・ヨーガは御身によって創始され、 御身によって説かれたものです。御身は至上ブラフマン、そして根源のバガヴァーンで いらっしゃいますので、私は敬意を込めて御身お二人に尊敬の礼をお捧げ申し上げま す。親愛なる主よ、御身のお姿を拝見することは非常に難しいことですが、御身の慈悲 を授かれば誰もがすぐにでも御身のお姿を拝見することができます。御身がここにお越しくださり、無知と激情に動かされている私どもに姿をお示しくださったのはただ御身のいわれのない慈悲の現われでございます。 

親愛なる主よ、私どもはダイテャ、すなわち悪魔でございます。ダイテャの他にも、ガ ンダルヴア、シッダ、ヴイッデャ-ダラ、チャーラナ、ヤクシャ、ラークシャサ、ピシャー チャ、幽霊や邪気など、悪魔的な質を持つ者は御身を崇拝することも献身者になること もできません・私どもはただ献身者になれないだけではなく、献身奉仕の道を妨げるば かりでございます。しかし、御身はバガヴァーンとして全ヴェーダを代表するお方で、 純粋な徳の様式にあり、常に超越的な立場にいらっしゃいます。ですからこそ、私ども 激情と無知の様式に生まれついた悪魔でさえも御身の蓮華の御足に服従することによっ て献身者となることができたのです。悪魔として生を受けながら純粋な献身者となっ た者もいます。また献身奉仕から得られる何かの報酬を求めて御身の蓮華の御足に服 従した者もおります。 

偉大な神々でさえも御身と直接交際することができないにもかかわらず、御身のい われのない慈悲によって、私どものような悪魔が御身と直接交際することができまし デ!ヴァ た。いかにして御身がマーヤーを通して活動されるかを知る者はいません。神々でさえ おはか も御身の内的エネルギーのふるまいを推し量ることができないのですから、どうして .つつ 私ども悪魔などに御身が理解できましょう。ですから、ただ御身に慎ましい祈りをお捧 ゆだ げ申し上げます。どうか慈悲をお授けください。私どもは御身に完全に身を委ねており ます。何度生まれても御身の蓮華の御足を忘れることがありませんように、どうかいわ れのない慈悲をお授けください。私どもの唯一の望みは、パラマハンサのように一人で 生きることです。そして心穏やかにただ御身の蓮華の御足に身を委ねながら、一人で世 界を旅して行きたく存じます。もう一つの望みは、ただ御身の献身者と交際することで す。それ以外の者とは付き合いたくありません。 

親愛なる主よ、御身こそがこの世界の最高支配者であり、全世界は御身によって導か けが れています。どうか、私どもが御身にお仕えする機会に恵まれ、あらゆる物質的汚れか ら解放されますように・御身に超越的な愛情奉仕を捧げる人は、ヴェーダに定められて いる規定原則を完全に越えることができます。どうか私どもが献身奉仕によって浄化されますように」

ここに現われた「パラマハンサ」という語は「最高の白烏」という意味です。白鳥は湖の水 にミルクが混ざっていればミルクだけを選び出して飲むことができると言われていま す。パラマハンサの段階に到達した人は、もはやヴェーダの規定原則にしたがう必要が ありません。パラマハンサは純粋な献身者とだけ交際し、物質的な傾向が強い人々との交際は避けます。物質的な執着が強い人は.ハラマハンサとの交際の価値が理解できな いのですが、精神的な感覚が発達した恵まれた人はパラマハンサに保護を求め、人生の 使命を完成することができます。 

主クリシュナはバリ・マハーラージの祈りをお聞きになった後、おっしゃいました。 「悪魔の王よ、スヴァヤンブヴァ・マヌの時代に、マリーチという名のブラジャーパティ デーヴァ がその妻ウールナの胎内に六人の神々を息子としてもうけた。かつて、主 デiヴァ ブラフマーが欲情に駆られて自分の娘を追いかけた時、この六人の神々は主ブラフマー いや のふるまいを卑しいものを見るかのような視線で見た。その批判的態度が大いなる侮 辱であったために、彼らはヒランニャカシプの息子として生まれることを余儀なくさ れたのだ・後にこの上ランニャカシプの息子たちがデーヴァキーの胎内に入れられ、生 まれるや否やカムサに殺されたのだ。親愛なる悪魔の王よ、生まれたばかりの息子を六 人も殺されたデーヴァキーは、悲しみにうちひしがれつつも、息子たちに一目でも会い たいと切に望んでいる。六人の息子たちがお前のところに住んでいることはわかって なぐさ いる。わが母デーヴァキーを慰めるために、六人を連れて行きたい・これら六人の束縛 された魂はすべて、デーヴァキーに会えば解放を達成し、大きな喜びに満ちてもとの星 に戻ることができよう。これら六人の名前はスマラ、ウドギータ、パリシュヴァンガ、パ タンガ、クシュドラブリット、そしてグリニーである。この六人は、本来の神々の姿に戻 ることができるのだ」 

クリシュナがこのようにお話しになると、バリ・マハーラージは主の意図を理解し、 主に豪華な崇拝を捧げました。その後、主クリシュナと主バララーマは六人の束縛され た魂を連れてドワーラカーの街にお戻りになり、赤ちゃんの姿の六人を母デーヴァキー こ皇7こつ にお示しになりました。大きな喜びに打たれたデーヴァキーは、母としての愛の洗惚を 感じるとすぐに胸から乳が流れ出したので、満足のいくまで六人に乳を与えました。デー ヴァキーは赤ちゃんを膝の上に乗せ、何度も何度も頭の匂いをかぎました。デーヴァキー は「クリシュナが死んでしまった赤ちゃんを連れ戻してくれたんだわ」と考えていまし た・しばらくの間、デーヴァキーはヴィシュヌのエネルギーに我を忘れて、亡くなっ か た子供たちとのひとときに母としての愛を噛みしめていました。

デーヴァキーのお乳は主クリシュナがお飲みになったものなので、超越的な甘露となっていま した。六人の赤ちゃんはその甘露を飲んでただちに自己を悟りました・彼らは主クリシュ ナ、主バララーマ、父ヴァスデーヴァ、そして母デーヴァキーに尊敬の礼を捧げた後、す ぐにそれぞれの星へと帰って行きました。 

六人が去って行く様子を見たデーヴァキーは、亡くなった息子たちが帰って来たかと思うと、すぐにそれぞれの星に去って行ったので、ただ驚きに打たれ呆然となる{はか りでした。彼女はこの出来事が一体何なのかまったくわからなかったのですが、無限の 力を持つ主クリシュナならどのような不思議なこともできるに違いないと考えて、何 とか納得しました。主の想像を絶したエネルギーと無限の力を受け入れない限り、主ク リシュナが至上魂であることを理解することは不可能です。主は無限の力によって無 リーラー リーラl 限の遊戯を行なわれます。主の無限の遊戯をすべて語り尽くすことは誰にもできませ ん・主のすべてを知ることは不可能です。ナイミシャーランニャの森でショゥナカを筆 頭とする聖者たちに『シュリーマド・バーガヴァタム』を語ったスータ・ゴースワーミー はその点に関して次のような見解を述べています。 

「偉大な聖者たちよ、よく理解しておきなさい・主クリシュナの超越的な遊戯は永遠 であって、単なる歴史上の出来事ではない。主に関する話題は主自身と何ら変わるとこ リーラー ただ けが ろがない。したがって主の遊戯に耳を傾ける者は直ちに物質界の汚れから解放される。 純粋な献身者は主の話題を甘露のように楽しむのだ」 このような話題がヴイヤーサデーヴァの高貴な息子であるシュカデーヴァ・ゴース ワーミーによって語られました。それを間く者も、そして他の人に語って聞かせる者も、 クリシュナ意識になることができます。精神界に帰ることができるのはクリシュナ意 識の人だけです。

以上『クリシュナ』第八十四章「ヴァスデーヴァへの精神的教え」に関するバクテイ ヴェーダンタ解説終了。

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